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<ともに日弁連を変えよう!市民のための司法をつくる会>

日弁連会長宛て 申入書

                                 2020年5月11日

日本弁護士連合会
会長 荒 中様

「ともに日弁連を変えよう!市民のための司法をつくる会」(変えよう!会)

代表 及川 智志

申   入   書

本年4月に発令された新型コロナウイルス感染症を対象とする新型インフルエンザ等対策措置法に基づく緊急事態宣言が、本年5月4日に同月31日まで延長されるとともに、34県は感染症拡大防止と社会経済活動の維持との両立に配慮した取り組みに段階的に移行するとされたことに伴い、以下のとおり申し入れます。

このページの内容

第1 申入れの趣旨

1 日弁連会長として、下記の内容を満たした会長声明または要請書を早急に発出することを求めます。

各地の裁判所において、現在停止されている民事、家事事件等の事件を、「一定程度」といわず、可能な限り広い範囲で早急に再開できるための運用方法の工夫を行うとともに、最高裁判所は各裁判所の運用工夫の事例を早急に収集し、これを各地の裁判所に開示する等の情報提供を展開されたい。

また、段階的な再開となった場合については、仮に事件類型ごとに範囲拡大がなされるのであれば、各地の裁判所において、その進行状況が各地の裁判所のホームページ等で国民に迅速に開示されたい。
本年5月1日及び5日に事務連絡として発出した検討要請については、各地の地域の状況に応じて適切に行われるべきものであり、全国で統一した対応を求めるものではないことについて趣旨を徹底されたい。

2 日弁連として、全国の弁護士会に対して、その所在地域の地方裁判所、家庭裁判所、簡易裁判所に対して、緊急事態宣言の趣旨をできる限り損なわないように方法等を工夫することにより、できる限り広い範囲での民事事件・家事事件の再開を求める申し入れを行うことを呼びかけることを求めます。

第2 申入れの理由

1 本年4月7日に新型コロナウイルス感染症を対象とする新型インフルエンザ等対策措置法に基づき、7都道府県を対象とする緊急事態宣言が発令され、同月16日、対象地域が全国に拡大されたことに伴い、全国の裁判所では本年5月6日までに予定されていた民事事件・家事事件の期日については、そのほとんどが裁判所による一方的な判断のみで期日取消となっています。また、この緊急事態宣言が、本年5月4日に同月31日まで延長されるとともに同月14日の専門家判断によって解除可能との政府見解が出されたこともあり、既に東京地方裁判所、東京家庭裁判所のように5月14日までの期日の取消が確定している裁判所以外の各地の裁判所の対応がどうなるかが待たれる状態となっています。

2 しかしながら、上記のようなほぼ一律の期日取消による対応については、裁判所の所在する各地域の感染拡大状況の違いに鑑みれば、国民の裁判を受ける権利を不当に制約していると評価できるものとなります。政府は、緊急事態宣言に合わせて、不要不急の外出の自粛を呼びかけていますが、今回、期日を取り消された民事事件・家事事件については、裁判所が一方的に不要不急の事件であると宣言したと同然であり、やむにやまれぬ理由で裁判所を利用するに至った国民の個別事情については一切配慮されていないものといえます。感染が拡大していない地域では裁判所内での換気を十分にとり、当事者・関係者間の距離を2m以上確保する形での法廷の開廷が可能とも思われ、さらに感染拡大が進行している地域であっても弁論準備期日を書面による準備期日に切り替えたり、双方電話やマイクロソフトTeams等のWeb会議を使った進行協議期日に振り替える等、緊急事態宣言の趣旨を損なわない形で裁判の遅延を避ける取り組みは可能と考えられます。これまでの全国的な対応は、最高裁判所の「新型インフルエンザ等対応業務継続計画」を参考にしたものと考えられますが、同計画においても、「各地の裁判所の体制等の実情や地域の事情も異なることから、業務継続計画の運用については、各裁判所の実情等を踏まえて柔軟に行うことが必要である。」とされています。

3 このような状況を受け、本年5月3日の憲法記念日を前に最高裁判所長官が異例の記者会見を行い、同月1日に最高裁判所が全国の裁判所に宛てて、緊急事態宣言が延長されても「裁判手続きのうち一定程度を再開することが考えられる」との見解を含む事務連絡を行っていることが公表され、また、同月5日には、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための重点対策が必要な13の「特定警戒都道府県」を除く34県の裁判所で、実施可能な裁判手続きの範囲を検討するよう要請する事務連絡を送っていることも明らかとなりました。

国民の裁判を受ける権利の保障の観点からは、上記の最高裁判所長官の記者会見のような「一定程度を再開」では足りないことは明らかであり、裁判所は可能な限り広い範囲で早急に裁判手続きを再開できるための運用方法の工夫をすべきです。そのためには、全国的な情報の共有化が必要であり、最高裁判所において各地での運用方法の工夫例を早急に収集し、これを各地の裁判所に開示する等の情報提供を展開するべきといえます。また、事件類型等による段階的な手続き再開となった場合については、その再開の状況が各地によって異なってくるべきである以上、各地の裁判所において、その進行状況が各地の裁判所のホームページ等で国民に迅速に開示されなければなりません。さらには、上記の緊急事態宣言発令直後には、全国の裁判所でほぼ一律の期日取消となってしまった経過に鑑みれば、改めて、最高裁判所から裁判手続きの再開については各地域の状況に応じて適切に行われるべきものであり、全国で統一した対応を求めるものではないことについてその趣旨を徹底されるべきです。

4 最後に、各事件の進行については、各裁判体の個別判断によるところであり、最高裁判所の「新型インフルエンザ等対応業務継続計画」においても、各裁判所の業務継続計画については裁判所ごとに適宜作成されるべきという前提があります。そのため、各地の裁判所で適切な対応を求め、全国の弁護士会から各所在地域の裁判所に対して申し入れを行う必要があります。岡山弁護士会が率先して申し入れを行っていますが、この動きは全国的にはまだ拡大していません。日弁連が音頭をとり、全国の弁護士会に対して、その所在地域の地方裁判所、家庭裁判所、簡易裁判所に対して、緊急事態宣言の趣旨をできる限り損なわないように方法等を工夫することにより、できる限り広い範囲での民事事件・家事事件の再開を求める申し入れを行うことを呼びかけるべきです。

以上

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