重点政策「概要」

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変えよう!会の新しい重点政策(2021年9月版)を以下の通りまとめました。

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はじめに

日弁連は私たち会員の声に真摯に耳を傾けているでしょうか。

日弁連の会務運営はどのようにされてきたのでしょうか。会員にとって大事なことが公開の手続きで民主的に決められているといえるでしょうか。

最高裁や法務省、政府に対し、日弁連は、言うべきことを忖度なしに言えているでしょうか。

私は、日弁連が、会員の声をもっと丁寧に聴き、一層透明で民主的な手続きにより運営されるよう、また対外的には、誰に対しても忖度なしに「正しい」と信ずることを訴えてゆくべきだと考えます。

なによりも、弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命としています。また、プロフェッションとしての弁護士には公益性が不可欠の要素です。このような弁護士の使命を全うし、公益性を維持するためには、弁護士の仕事を生業としていけるだけの経済的基盤の確立が必須です。

しかし、近年の「司法改革」の進展につれ、弁護士の多くが経済的に疲弊する状況になってきています。

このような弁護士の苦境を改善し、弁護士が40年後も50年後も生き生きと活躍できる環境をつくるため、日弁連はいますぐに手を打たなくてはなりません。

ところが、いまの日弁連には、弁護士の直面する厳しい現実を直視した上での制度設計や将来を見据えた政策が欠けていると言わざるを得ません。

だから、私たちとともに日弁連を変えましょう。人権擁護の担い手たる弁護士の生業を守り、弁護士が社会で活躍し続けることを通じて、市民のための司法をつくりましょう。

そのために、当会は、2019年6月の発足以来、全国のみなさまと意見交換や学習会を重ねるなどして、日弁連に求めるべき重要政策をまとめました。

以下、ご案内いたします。

第1 弁護士がその使命を全うできるよう弁護士の生活を守る

1 民事法律扶助報酬の引き上げ

(1)民事法律扶助報酬

日本司法支援センター(法テラス)のあまりにも低額で不合理な報酬のあり方を見直し、民事法律扶助の報酬(及び実費)を引き上げることを、日弁連の重要課題にするべきです。

 

報酬の引上を含む法テラス改革については、全国各地で会員各位からご意見をうかがうと、いつも強く実現を求める声が上がります。報酬の引上といっても、正当な報酬を求めるという当然のことです。

しかし、いまの日弁連は、こうした当然の要求についても、法務省及び法テラスとの関係悪化を恐れ、忖度しています。また、これまでの日弁連は、非公開の場で限定された担当者が法務省及び法テラスと協議するというスタイルを踏襲しており、協議の状況などについての情報の公開は極めて不充分です。これでは全国の会員の納得を得ることはできず、その不満は鬱積するばかりです。

弁護士は、法律扶助の主役です。これまでのやり方を変えて、全国の会員に情報を広く公開し、日弁連会長が先頭に立ち、日弁連が一体となって、そして全国の弁護士会と弁護士が一丸となって、政府に対し求めていけば、必ずや民事扶助報酬の引上は実現できるはずです。

(2)実現のためには

民事法律扶助報酬の引上のためには、法務省及び法テラスだけでなく財務省を説得する必要があります。そのために、日弁連は、法務省及び法テラスとの協議に努めるだけではなく、法律扶助のエンドユーザーである市民や、社会問題に取り組む市民団体と連携し、さらに、全国での署名活動、与野党の国会議員への働きかけ、地方議会からの意見書提出の働きかけ、院内集会やシンポジウムの開催などを通じて世論喚起することが必要です。

たとえば、養育費請求の問題です。より広く法律扶助を適用すること、当事者の償還については減免すること、弁護士報酬については正当な額を支払うことを求め、当事者と弁護士、日弁連が連携して、社会運動を作っていくことが考えられます

過去の日弁連の運動を振り返ってみると、弁護士費用の敗訴者負担制度を撥ね返したときや、司法修習生給費制復活のときの運動と取組が、民事法律扶助報酬の引上のためにも参考になるはずです。

まずは、日弁連会長が積極的に声明等により社会に意見を発信していくとともに、日弁連内には、本部長を会長とし、各単位会から最低1人の委員が参加して、平場で民主的な議論を尽くすことのできる「対策本部」を設置、日弁連が一体となって、そして全国の弁護士会と弁護士が一丸となって、前記のような運動に邁進できる体制を構築するべきです。

なお、報酬引上の一方で、被援助者の負担を軽減する必要がありますから、償還減免の拡充ももちろん進める必要があります(第5で後述)。

 

声を上げなければ改革は永遠に実現しません。政府との摩擦を恐れず、日弁連として、言うべきことは正々堂々と主張するべきです。持続可能な人権擁護活動のために、40年後も50年後も弁護士が精一杯元気に人権擁護活動に取り組んでいけるにするために、日弁連は、改革の実現に向けた運動を強力かつ継続的に展開していかなくてはなりません。

2 国選報酬の引き上げ

(1)国選報酬

実費の面での問題(謄写費用が否認事件を除いて200枚までは支払われないこと、通訳費用の立替え払いを余儀なくされること、遠距離接見交通費・出張旅費等についての硬直的な運用、当事者鑑定費用が支払われないことなど)、被疑者国選での努力が報われない問題(準抗告の申立により勾留延長決定の取消等を得ても報酬加算がないこと、接見禁止解除の成果加算がないこと、基礎報酬・多数回接見加算の報酬が低いこと、認定落ち加算がないことなど)、被告人国選での努力が報われない問題(起訴後の多数回接見が一切加算されないこと、基礎報酬が安いこと、保釈の特別加算報酬が安いこと、保釈は1回しか考慮されないこと、追起訴加算報酬が安いこと、実質一部無罪加算がないこと、被疑者国選から被告人国選への継続減算がされることなど)、不起訴事件についての問題(「嫌疑なき不起訴」を獲得した場合や、福祉との連携等の「入口支援」により不起訴とされた場合の報酬問題など)、国選費用請求期間が短期間にすぎる問題、等々、さまざまな問題があります。

(2)報酬はお金だけの問題ではないこと

刑事弁護は弁護士でなければできない仕事であり、その報酬の問題は、弁護士の収入の問題にとどまらず、弁護士の仕事の適正評価の問題でもあり、弁護士の矜持の問題でもあります。

国選弁護報酬の適正化は、将来の弁護士業務の安定化に欠かせない課題であり、持続可能な弁護士活動のひとつの基盤となります。

そして、刑事弁護の報酬を拡充していくことが、人質司法からの脱却(勾留等に対する準抗告等、保釈のためのさらなる活動等)、入口支援への取組(更生支援等)といった、刑事弁護のさらなる拡大と充実化に資することとなります。

(3)実現のためには

国選弁護本部が取り組んでいる活動を全国の会員が認識できていない現状があります。力を結集して取り組むためには、国選弁護本部の活動を全国の会員も含め日弁連全体で共有する必要があります。そして、立法事実を集めて検討し、合理的な基準に改めるよう取り組むためにも、日弁連に報酬に関する意見集約の窓口を設置すべきです。

①そもそも支出されないことが不合理であるもの(実費関係等)、②硬直的な約款(その内容を具体化する報酬算定)を随時バージョンアップして合理的な基準に改めていくべきもの、③そもそも費用が安いので増額を主張すべきもの、④その他手続面等に分類できますが、これらの改善に取り組むべきです。

1項(民事法律扶助)の(3)で述べたように、日弁連会長が積極的に声明等により社会に意見を発信していくとともに、日弁連内には委員会横断的な「対策本部」(本部長は日弁連会長)を設置し、日弁連が一体となって、そして全国の弁護士会と弁護士が一丸となって、運動に邁進できる体制を構築するべきです。

公正な刑事司法を担保するには、弁護人が適切に弁護活動を行うに足りる十分な報酬確保が必須であり、そのためにも、報酬基準を見直し、適切な弁護報酬を実現することは国の責務です。「適切な弁護報酬」とは、「弁護人が弁護士として事務所経営を維持しながら、適正な弁護活動を行うために必要とされる報酬」であり、最低限の経費の補償はもとより、経営を維持するために必要な収入時間単価の実現を目指していくべきです。こうした基本方針自体は、2007年にすでに日弁連がとりまとめているのですから(直近の要求項目は2021年2月26日正副会長会承認)、まずは、その実現を日弁連の重要課題として社会に訴えるべきです。その際、えん罪被害者や再審法に取り組む市民団体などとも連携して世論喚起を図ることも重要です。

3 会費減額(支出の見直し)

弁護士激増による弁護士の経済的基盤の弱体化により、とりわけ若手を中心に会費の負担感が重くなっています。会員の日弁連への求心力を維持するためにも、重要な政策を行うために必要な支出は行いつつ、削るべき支出を削る不断の努力を行って、会費の減額を検討するべきです。

この点、現在日弁連は、一定程度会費を減額する検討を進めていますが、その推移を見極めつつ、対応していく必要があります。

4 弁護士の就労環境の改善(実態)

日弁連が実施した「第69期の弁護士就業状況アンケート集計及び分析結果」の自由記載欄には、「ボスのパワハラ、過干渉、会務を実質的にやらせない、弁護士業務以外の負担が大きい、仕事を教えない、外部と交流させない等いわゆるブラック事務所が多いです。このような実態を知らないまま就職してしまい、苦労したり、退職してしまう同期を何人も見ましたし、私もその一人です。」といった悲痛な意見が寄せられていました。

さらに、第70期に対する同様の日弁連アンケートには「私は50代のサラリーマンで修習前の会社のインハウスになった。同期の弁護士の話を聞いていると、一部上場企業ではありえない劣悪な労働条件である。このあたりを見直さないと、若い人たちはいずれ法曹を目ざさなくなると思う。」

「働き方改革などと世間では言っているのに、それを推進するはずの弁護士の世界は働き方が古いと感じます。委任契約を盾に残業代も支給せずに長時間労働(法定労働時間の2倍は働いています)を強いられていますが、実態から見れば何ら雇用契約と変わりません(指揮命令関係、労務対償性ともに明白)。

今、同じ改革が遅れている医師業でも改革が始められています。是非、弁護士業界も自浄作用によりこの問題に取り組んでほしいと強く思います。」

「70期だけで既に40人以上が離職したと聞き、その多くが、いわゆるボス弁のパワハラまがいの態度と聞いている。自分も同様の理由で転職活動中であるが、50期代以前の弁護士には、それが当たり前というような風潮が強く残っている。非常に憤りを感じるし、これに対し、日弁連乃至各弁護士会が何かしらの対応をとっていると聞いたことがない(認識していないとは考えられない。)。悪質な事務所については懲戒の対象になることを示し、ある程度指導していただきたい。」

「弁護士は長時間のハードワークにも耐えられるようなエネルギーが必要であり、生理などの不調のため休んだり3ヵ月以上の産休育休をとるようなやわな女性には勤まらないという風潮を変えてほしい。」

「ハラスメント及び、給与不払い等についての調査、公表を行ってほしい。」といった、厳しい意見がたくさん寄せられていました。

4 弁護士の就労環境の改善(対策)

こうした若手弁護士の現状と意見を真剣に受け止めるべきではないでしょうか。これを受け止められず、このまま日弁連が変わらなければ、日弁連も弁護士会も崩壊してしまいかねないのではないでしょうか。

つまり、労働時間の短縮、女性への差別的扱いやセクハラ及びパワハラ等の禁止、いわゆる「ブラック事務所」問題への対応など、弁護士の就労環境を改善するための制度的な対応は、日弁連の喫緊の課題です。SOGI(性自認や性的指向など)ハラスメントへの対応と、これを起こさない環境作りも必要です。

若手弁護士の働き方に関する問題については、勤務条件のミスマッチや入所後のトラブルを防止するため、勤務時間、休日休暇、給料・収入、個人事件の受任の有無等、最低限合意すべき事項について定めたガイドラインを策定するべきです。全国的な相談窓口の拡充もするべきです。

また、ひまわり求人求職ナビが就職活動において活用されていることから、同ナビの記載事項を見直し、たとえば離職率、勤務条件明示書面の交付の有無等の項目を加えるといった工夫をすることも有意義です。

第2 日弁連の会務運営方法の改革

1 多すぎる会務による地方会への加重負担の是正

もちろん日弁連は、地方会や各弁連、各種委員会、一般会員の意見を大切にするべきです。

一方で、いまの日弁連から地方会への会務に関する依頼は、地方会の規模や対応力に意を払うことなく、一方的かつ大量に発信されており、なかには何のためにするのかわからない依頼もあります。

そこで、このような悪習を見直して、多すぎる会務による地方会への加重負担を是正するべきです。

2 理事会の形骸化の是正

近年の日弁連執行部は、「理事会内本部」や「対策本部」などの体制を名目として、執行部主導で動くなどし、各種委員会や単位会、一般会員の声に耳を傾けないきらいがあります。たとえば、理事会内本部は、日弁連会長が本部長となり、日弁連会長指名の委員のほか、日弁連

理事(各単位会の会長など)が委員となっている組織です。

しかし、日弁連理事が委員に入っていれば良いというものではありません。

日弁連理事は、月1回の理事会のときに、直前または当日に分厚い資料を与えられ、事務局から短時間の説明を受け、さらに短時間のうちに質問や意見を述べるだけです。これで地方単位会からの意見が反映されているといえるのでしょうか。

このような現在の日弁連に蔓延している専横的な会務運営、そのひとつの象徴としての理事会の形骸化を抜本的に改める必要があります。

3 総次長と嘱託弁護士の権限の肥大化の是正 単位会及び各種委員会の軽視の是正

まず、日弁連の委員会等の構成と議論には、各単位会や各弁連からの意見を反映させるべきです。日弁連の重要な委員会と対策本部については、全ての単位会と各弁連から1人以上の委員が選出されるようにし、各単位会と各弁連で議論されたことが十全に日弁連の委員会等の議論に反映されるようにすべきです。

また、いわゆる「総次長の壁」問題を解消するべきです。これは、各種委員会が専門的かつ継続的な取組から行おうとする意見書の

作成・公表や各種活動に対し、日弁連の事務方である事務総長や事務次長が消極的な対応をし、場合によっては、委員会の活動を妨げてしまう問題です。

このような委員会活動への障害は解消されるべきです。

さらに、日弁連の事務機構については、事務次長、嘱託の見直しを含めて、改革するべきです。日弁連の人材の登用については、派閥や登録期や年齢に拘泥することなく、適材適所に徹するべきです。

4 総会改革

日弁連の総会を改革するべきです。日弁連の最高意思決定機関は総会ですが、総会での意思決定は、派閥工作の末に獲得された多数の委任状の行使により正常に機能しているとは言えません。

そこで、委任状については、1人の代理人が代理できる人数の大幅な削減、受任者欄を白紙とする委任状の無効化、委任事項ごとに賛成と反対を明記することの義務づけなど、委任状行使の在り方を抜本的に見直すべきです。

また、書面投票、インターネットを利用した投票、総会自体のオンライン化など、総会における革新的な意思決定の方法についても検討する必要があります(技術的な対応を含めて検討組織を設けて具体的に実現に向けて動くべきです)。

第3 憲法と人権

1 憲法9条を護る活動の更なる推進

いわゆる「9条加憲論」など恒久平和主義に反する改憲に対しては、人権擁護団体としての日弁連の立場から、明確な反対意見を提出できるよう、早急に会内での合意形成を進めるべきです。

日弁連が、改憲の動きに対応すべく、会内合意形成のために多大な苦労を重ねていることには、素直に敬意を表します。2018年5月25日の日弁連定期総会において可決された「憲法に自衛隊を明記する憲法9条改正案に対し、国会での慎重審議と国民が熟議できる機会を保障するとともに、憲法改正手続法の見直しを求める決議」についても、さまざまな見方はありますが、一定の評価を受けていることも事実です。

しかしながら、これまでの日弁連の決議や宣言等に見られる基調をくり返すのみ

では、恒久平和主義に反する改憲案が発議された場合、今後の人権保障に重大な悪

影響を及ぼすことが明白であるにも関わらず、国民にその危惧を十全に伝えられな

い可能性が極めて高いと考えます。

改憲の動きがいよいよ現実化していくなかでは、日弁連が明確に反対の意思表示を行い、改憲案の具体的な危険性を国民に訴えていく必要性がますます高まっているのではないでしょうか。

2 国家緊急権の創設に明確に反対

国家緊急権の創設に対し、日弁連として、明確な反対意見を提出できるよう、早急に会内での合意形成を進めるべきです。

国家緊急権とは、戦争・内乱・恐慌・大規模な自然災害など、平時の統治機構をもってしては対応できない非常事態において、国家の存立を維持するために、憲法秩序を一時停止して非常措置をとる権限です。自由民主党の日本国憲法改正草案には国家緊急権が規定されています。

国家緊急権は、一時的にせよ憲法秩序を停止し、行政府への強度の権限集中と人権制約を伴うものであることから、行政府による濫用の危険性が高いものです。これまでの歴史を振り返ってみても、非常事態の宣告が正当化されないような場合であっても非常事態が宣告されたり、戦争その他の非常事態が去った後も速やかに憲法秩序を回復させることなく人権が侵害されたりしてきた例は枚挙にいとまがありません。

このような国家緊急権の創設を許してはなりません

3 秘密保護法、共謀罪法、安保法制、重要土地等調査規制法等の悪法の廃止

日弁連は、従前は別々に設置されていた秘密保護法と共謀罪法の対策本部を解消して1つに統合し、これらを2018年に「秘密保護法・共謀罪法対策本部」としました。

今後とも、秘密保護法、共謀罪法、安保法制、重要土地等調査規制法等の悪法の廃止に向けた活動を継続的に展開していく必要があります。

4 人権擁護活動の更なる推進

基本的人権の擁護と社会正義の実現が弁護士の使命です。日弁連は、各種委員会などの活動を通じてこの弁護士の使命を果たしてきました。

日弁連の人権擁護活動は現代においてますます多様かつ深い広がりを見せており、ここで言い尽くすことはできませんが、端的に言えば、各種委員会の活動をさらに活発に展開していくことこそが、日弁連の人権擁護活動をさらに推進することであり、そのための環境整備等に日弁連が尽力していくことこそが肝要です。

第4 法曹養成制度の改革

1 司法試験合格者数を年間1000人以下に(弁護士人口増の緩和)

1999年、政府に司法制度改革審議会が設置され、以来、本格的に司法改革が推進されました。

2006年に新司法試験が始まり、2007年から司法試験合格者数は7年連続で2000人を超えました。政府は2015年6月30日に法曹養成制度改革推進会議決定により現在の法曹人口政策を決めました。それは、司法試験合格者年間1500人以上を維持するという政策です。

そうするとどうなるのでしょうか。これは日弁連が予測しています。

毎年発行される日弁連の弁護士白書によれば、司法試験合格者年間1500人を維持した場合、いま4万3000人余の全国の弁護士数が2030年には5万人を超え、2040年には6万人を超えます

この間、日本の人口は減り続けますから、2050年には弁護士1人当たりの国民数は現在の約3000人から約1600人に半減します。

弁護士数が10年で1万人増加ですから、1年で1000人増えるという異常な激増が続くのです。

1000人というのは、北海道弁連(4会)または東北弁連(6会)の合計会員数に匹敵する人数ですから、異常としかいいようがありません。毎年、北海道弁連または東北弁連が1つずつ増えていく勘定になるのです。

裁判所の新受事件がピーク時の4割減となるなど、弁護士需要は増えず、日弁連の弁護士センサスによれば、弁護士の所得の中央値は2006年の1200万円から2018年の650万円とすでに半減しています。

今後30年の間に弁護士1人当たりの国民数が半減するのですから、30年後の弁護士の所得の中央値は300万円台になると合理的に予測されます。

弁護士は自営業が多いわけですが、この所得で家庭を守り子どもを育て老後の準備もして、場合によっては奨学金や修習貸与金を返還し、生活していけるでしょうか

そうした生活のなかで、基本的人権を擁護し社会正義を実現するという弁護士の使命を全うできるでしょうか

弁護士激増政策を見直し、司法試験合格者数を速やかに年間1000人以下にするべきです。

なお、地方会への新人弁護士の登録が減っていると言われますが、これを弁護士人口増加で解決することはできず、地方会での登録を後押しするための制度的支援や、弁護士の需給マッチングといった別の政策が必要です。

2 誰でも受験できる司法試験に(法科大学院を要件としない制度に)

司法改革では弁護士激増と法科大学院制度がセットで導入されました。しかし、時間とお金がかかりすぎる法科大学院は、法曹養成制度として重大な欠陥を有していると言わざるを得ません。

また、今般の法科大学院改革については、未習者割合の撤廃は多様性の理念を喪失させ、在学中受験は「プロセス教育」に明確に反しています。

とすれば、いまや法科大学院を強制する合理性はありません。法科大学院に入学しなく

とも司法試験を受験できるようにするべきです。

3 「谷間世代」への一律給付実現と給費制の完全復活

当会は、司法修習生に実質的な給与を支給する「給費制」を廃止したことが憲法違反であるとして、修習を受けた全国の弁護士が国に1人1万円の損害賠償を求めた訴訟において、2019年7月10日付けで最高裁判所第2小法廷(三浦守裁判長)が弁護士の上告を退ける決定をしたことにつき、強い遺憾の意を表明します。

なぜなら、法曹養成は国の責務であるからです。日本国憲法は基本的人権を保障しています。また、司法は、国権において、立法と行政の誤りを正し、少数者の人権を擁護するという重要な役割を果たしています。さらに、「弁護士は、基本的人権を擁護し、

社会正義を実現することを使命とする」(弁護士法1条1項)と規定されるなど、法曹はわが国において人権擁護の砦です。ですから、法曹を養成し、その質を維持し、基本的人権の擁護を実現することは、国の責務です。

国の責務である以上、法曹養成の費用は国が負担しなければなりません。また、法曹になるためには、司法試験の合格後、相当期間の司法修習に専念する義務が課され、その期間においては原則として他の仕事に就いて収入を得ることが禁止されています。とすれば、司法修習期間においては、修習に専念し生活を営むことができるだけの給与が支払われなくてはなりません

したがって、修習生が給与を受ける権利は憲法上保障されていると解すべきです。それにもかかわらず、これを否定した一審及び二審の判断を最高裁が支持したことは、憲法の解釈適用を誤ったものといわざるを得ません。裁判所法を改悪して、司法修習生に実質的な給与を支給する「給費制」を廃止したことは、憲法に反しています。とくに、新65期から70期の修習生には修習給付金(基本給付金135,000円等)すらも支払われていないのですから、国が法曹養成の責務を果たしていないことが一層明らかです

ですから、法曹養成を国費で賄う制度に戻す必要があります。つまり、司法修習期間を2年間に戻し、その間の生計を成り立たせる給費制を復活するべきです。そのためには国費負担が増えますが、一方で、法科大学院を要件としない法曹養成制度に戻すことで、国費を削減できます。

まずは、「谷間世代」に修習給付金が一律給付されるようにしなければなりません。 

   そして、給費制の完全復活を求め続けなくてはなりません。そのためには、日弁連執行部が先頭に立ち、全国の弁護士会と弁護士があきらめずに一丸となって、市民とともに国に対する運動を展開することが必要不可欠です。

第5 法テラスの改革

1 償還減免の拡充(給付制に向けた国民運動)

日本司法支援センター(法テラス)の低額かつ不合理な報酬のあり方を見直し、報酬と実費を引き上げるとともに、一方で、被援助者への負担を軽減するため、給付制を実現すること、少なくとも償還免除を大幅に拡大することを求めなくてはなりません。

償還免除については、生活保護に準ずる被支援者の償還免除拡大に向けた運動も強化発展させる必要があります。また、一部償還免除を認める一般的な制度も創設するべきす。

これらの改革の実現のためには、法務省及び法務省との交渉といった旧来の方法だけでは足りません。最終的な法律扶助の需要者である市民と日弁連が結びついて、強力な運動を展開していく必要があります。

 日弁連法律援助事業の公費化

法律援助事業の国費化を求めることも重要な課題です。犯罪被害者、難民、外国人、子ども、精神障害者等、生活保護などの分野における法律援助事業については、現在は、国費負担ではなく、弁護士会費で賄われています。

これらの分野において、またさらに新たな分野において、人権擁護活動を一層充実していく必要があることは当然ですが、一方で、これらの事業については、私たちの会費で賄われる筋合いのものではなく、早期に国から費用を支出すること(国費化)を求めるべきです。

3 手続の改正(手続と決定の透明化と合理化)

法テラスのあまりに煩雑な手続を合理化・簡略化するなど、手続面での改善も強く求める必要があります(どうしてそんなに提出しなければならない書類が多いのか!?)。いまのままの手続では、弁護士が本来の業務に集中できず、手続のために疲弊してしまいます。

法テラスの決定について、決定の過程において不透明であり、決定の内容についてあまりにも不合理なケースがあるという問題(たとえば、養育費を得た場合の報酬を依頼者から弁護士が直接回収しなければならないという問題など)については、全国の会員の意見・苦情を日弁連に集めたうえで、それらの問題を日弁連の喫緊の課題として解消していく必要があります。そのためには、法テラスと法務省に対し、忖度なしに、言うべきことを言わねばなりません

第6 その他の重点政策

1 男女共同参画の推進 

男女共同参画を推進します。また、LGBT、障がい者など多様な弁護士が活動できるように、研修を行うとともに、委員会運営や会館のありかたなどの見直しをはかります。

 

2 若手弁護士の業務対策の推進

法テラスの改革や非弁対策などにより安心して業務に取り組める基盤を作ることと、個々の弁護士の自主性を尊重することにより業務拡大を図ります。組織内弁護士については組織の中で人権擁護の担い手となれるようJILAと連携するなどして独立性をサポートする取り組みを行います。

 

3 非弁対策の強化

非弁行為は、違法行為であるとともに消費者問題でもあります。弁護士以外が行い得ない法律事務については一般論として、さらに弁護士であっても倫理的に行うべきでない事務については特に、非弁に依頼した市民に最終的に大きな被害をもたらす危険があります。一見、依頼者には非弁に依頼する利益があるように見えますので、その誤解を解くための積極的広報活動が日弁連に求められます。

また、各単位会まかせの非弁案件の処理では、組織的対応として不十分です。日弁連業際・非弁・非弁締結問題対策本部が各単位会をサポートし、小規模会であっても対応できる全国的な体制を作らなければなりません。隣接士業の懲戒制度の不備についての問題点等を協議する士業団体間での協議会の各地開催も検討されるべきです。非弁を許さない士業間の連携を日弁連がリードしていく体制作りを目指します。

4 国選弁護のさらなる拡充

逮捕直後からの国選弁護人の選任を求めます。

在宅被疑事件にも国選弁護制度が必要です。

被疑者国選弁護における弁護人の複数選任の規定(刑訴法37条の5)を見直し、弁護人を複数選任できる事案を広げるべきです。

国選弁護活動における医師等の鑑定費用を支援する制度、国選弁護の後に弁護士が医療・福祉機関等に繋ぐ支援をした場合に報酬や費用を支払う制度など、いくつかの弁護士会で先進的な取組がされていますが、こうした新たな刑事弁護拡充制度を全国に広げる必要があります。

 

5 えん罪をただす再審の法整備を

裁判をやり直して無実の人を救済する再審は、冤罪救済の最後の手段です。しかし、再審の法整備がされていないため、無実の人を無罪にできないという重大な人権侵害が生じています。

えん罪をただす再審の法整備を求めるとともに、検察官が所持している証拠の全面開示、再審開始決定に対する検察官からの不服申立の禁止・制限を求めます。

 

6 貧困問題対策のさらなる拡充

いまだ日本の貧困問題は深刻です。この解決なくして弁護士が十全に人権擁護の使命を果たしているとはいえません。貧困問題対策をさらに拡充します。

 

7 消費者問題対策のさらなる発展

消費者の権利が守られる社会の実現は、私たち弁護士に課せられた重要課題です。これまでも多様な消費者問題に日弁連は果敢に取り組んできましたが、この取組をさらに発展させます。

8 災害対策・被災者支援活動のさらなる充実

近年、災害が多発しています。弁護士と弁護士会は、災害が発生する都度、全力で被災者支援活動を行ってきました。引き続き、災害が発生した場合に適切かつ迅速に対応できる体制の整備に努める必要があります。

 

9 カジノ解禁反対

カジノを解禁することは、刑法が賭博を犯罪とし、刑罰をもって禁止している趣旨を没却し、法秩序全体の整合性を著しく損ないます。人の不幸を土台にした経済論議には与しません。カジノ解禁反対の取り組みを更に強化します。

 

10 福島第一原発事故に基づく損害の完全賠償請求

東京電力福島第一原子力発電所の事故から10年以上が経ちます。この未曾有の事故により、命を奪われ、家族を奪われ、生活を奪われ、ふるさとを奪われたたくさんの被害者に対し、いまだに十分な損害賠償がされていません。福島第一原発事故に基づく損害の完全賠償を求めます。

 

11 原子力発電所の廃止

人類を破滅に導きかねない原発はできるだけ早期に廃止するべきです。そのためにも再生可能エネルギーの導入をますます促進すべきです。

 

12 小規模単位会への補助の拡充

全国で人権擁護を使命とする弁護士が活躍できるよう、とくに小規模単位会への補助を拡充するべきです。この点、日弁連は一定の拡充策を進めていますが、近年の弁護士人口の増大に合わせて、さらなる補助制度の改善を図ります。