緊急要請書  <全国52各弁護士会 会長宛て>

by 事務局 | 2020年4月24日 1:55 PM

緊急要請書

2020年4月22日

全国52各弁護士会 会長 殿

ともに日弁連を変えよう!市民のための司法をつくる会

当会は、日本弁護士連合会の適正な政策を求め、市民のための司法の実現を希求する弁護士により構成する任意団体として、全国の弁護士会に対し、以下のとおり要請いたします。

第1 要請の趣旨

当会は、全国の弁護士会に対し、検事長の勤務延長に関する閣議決定(以下、「本閣議決定」といいます。)を撤回させ、検察庁法改正案を含む国家公務員法(以下、「国公法」といいます。)等の一部を改正する法律案中の検察官の定年ないし勤務延長に係る特例措置の部分(以下、「本特例措置」といいます。)の成立を阻止するため、会長声明等により意見を表明すること、日本弁護士連合会に対して本閣議決定の撤回及び本特例措置の成立を阻止するための運動を展開するように求めること、を要請いたします。

第2 要請の理由

政府は、本年1月31日の閣議において、本年2月7日付けで定年退官する予定であった東京高等検察庁検事長について、国公法第81条の3第1項を根拠として、その勤務を6か月(本年8月7日まで)延長する決定をしました。

しかしながら、検察官の定年退官は、検察庁法第22条に規定され、同法第32条の2において、国公法附則第13条の規定により、検察官の職務と責任の特殊性に基づいて、同法の特例を定めたものとされ、これまで、国公法第81条の3第1項は、検察官には適用されていません。

その理由は、検察官が、強大な捜査権を有し、起訴権限を独占する立場にあって、準司法的作用を有しており、犯罪の嫌疑があれば政治家をも捜査の対象とするため、政治的に中立公正でなければならないからです。検察官の人事については、政治の恣意的な介入を排除し、検察官の独立性を確保する必要があります。これは、憲法の基本原理である権力分立の要請です。

したがって、国公法の解釈変更による上記の勤務延長は、解釈の範囲を逸脱するものであって、検察庁法第22条及び第32条の2に違反し、法の支配と権力分立を揺るがすものと言わざるを得ません。

さらに、政府は本年3月13日に検察庁法改正法案を含む国公法等の一部を改正する法律案を通常国会に提出、同法案は4月16日に衆院本会議で審議入りしています(しかも、新型コロナウイルス感染予防対策にまぎれて5月連休明けにも可決されるおそれも指摘されています)。本特例措置は、全ての検察官の定年を現行の63歳から65歳に段階的に引き上げた上で、63歳の段階でいわゆる役職定年制が適用されるとするものです。そして、内閣または法務大臣が「職務の遂行上の特別の事情を勘案し」「公務の運営に著しい支障が生ずる」と認めるときは、役職定年を超えて、あるいは定年さえも超えて当該官職で勤務させることができるようにしています(検察庁法改正法案第9条第3項ないし第6項、第10条第2項、第22条第1項ないし第3項、第5項ないし第8項)。

しかしながら、本特例措置によれば、内閣及び法務大臣の裁量によって検察官の人事に介入することが可能となり、検察に対する国民の信頼を失わせ、さらには、準司法官としての職務と責任の特殊性を有する検察官の政治的中立性や独立性を脅かす重大な危険が生じます。これは、憲法の基本原理である権力分立に反します。

したがって、違法な本閣議決定の撤回を求めること、本特例措置の成立を阻止することは、基本的人権を擁護し、社会正義の実現を使命とする弁護士の責務というべきです。

日本弁護士連合会も本年4月6日付け「検事長の勤務延長に関する閣議決定の撤回を求め、国家公務員法等の一部を改正する法律案に反対する会長声明」において、本閣議決定の撤回及び本特例措置の成立の阻止を求めており、全国の多くの弁護士会も同旨の会長声明等により意見を発しています。

本閣議決定を撤回させ、本特例措置の成立を阻止するためには、まずは全国の全ての弁護士会が会長声明等により意見を発し、さらに日弁連が国会対策を含めた運動を強力に展開するべきです。

よって、当会は、要請の趣旨のとおり求めます。

(本件に関するお問合せ先)
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市民の法律事務所
弁護士 及 川 智 志
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