重点政策「概要」

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1 司法試験の年間合格者数を1000人以下とすることを求めます。
弁護士白書2018年版の予測でも、弁護士人口は、以下のとおり推移し、2030年に5万人超、2040年に6万人超、2050年に最多の6万3374人に達します。
  2018年 4万0066人  2020年 4万1962人
  2025年 4万6820人  2030年 5万1754人
  2035年 5万6453人  2040年 6万0729人
  2045年 6万3352人  2050年 6万3374人
しかも、日本の人口は減少し続けます。弁護士白書2018年版によれば、弁護士1人当たりの国民数は、2050年までにおよそ半減します。
弁護士需給のバランスを改善し、弁護士の収入が急激に低下している現状や、弁護士が自由と正義のための仕事をしにくくなっている現状を打開し、弁護士の職業的魅力、弁護士の夢とプライドを取り戻さなくてはなりません。

2 法科大学院を司法試験の前提としない制度改革を求めます。
2018年の法科大学院の入学者数は1621人に止まりました。 
これは、2006年の入学者数5784人に比べると約28%にすぎず、この間、法科大学院の入学者数は3分の1以下まで激減したことになります。
74校あった法科大学院のうち38校の法科大学院が廃止されるか学生の募集停止をしており、2018年7月現在で学生の募集をしている法科大学院は36校にすぎません。法科大学院制度の失敗は明らかです。

3 給費制の完全復活と「谷間世代」の不公平是正を求めます。
法曹養成の責務は国にあるのですから、国は司法修習生に対し生計の維持に足りるだけの生活費を支給し、修習に専念できるようにしなければなりません。
とすれば、給費制を完全復活しなければなりません。
まずは、現在の裁判所法(修習給付金制度)を谷間世代に対しても遡及適用するように、日弁連の全力を挙げて、求めるべきです。

4 政府に対し、日本司法支援センター(法テラス)の低額かつ不合理な報酬のあり方を見直し、報酬と実費を引き上げるとともに、被援助者への給付制を実現すること、少なくとも償還免除を大幅に拡大することを求めます。
また、犯罪被害者、難民、外国人、子ども、精神障害者等、生活保護などの法律援助事業の国費化を求めます。

5 弁護士偏在対応については、弁護士過剰の時代に応じた政策の見直しを進めるべきです。
また、偏在対応弁護士事務所については、貸付等の安易な援助制度に頼ることなく、地方自治体との提携を強める等、法律事務所の経営を継続して支えることのできる実質的な支援策を構築すべきです。

6 労働時間の短縮、女性への差別的扱いやセクハラ及びパワハラ等の禁止、いわゆる「ブラック事務所」問題への対応など、弁護士の労働環境を改善するための制度的な対応を検討し、この実現を目指します。

7 いわゆる「9条加憲論」など恒久平和主義に反する改憲に対し、また、国家緊急権の創設に対し、人権擁護団体としての日弁連の立場から、明確な反対意見を提出できるよう、早急に会内での意思統一を進めるべきです。秘密保護法、共謀罪法、安保法等の悪法については廃止を求めます。

8 少年法と刑事法の改悪に反対します。「改正」刑訴法については見直しを求めるべきです。

9 国選弁護制度については、逮捕直後からの国選弁護人の選任、在宅被疑事件への国選弁護制度の導入、被疑者国選弁護における弁護人の複数選任規定の見直しなど、さらなる拡充が必要です。また、国選弁護報酬の見直しと拡充(不起訴事件や保釈についてなど)を求めます。

10 日弁連会費の減額を検討すべきです。とくに若手を中心に会費の負担感が重くなっています。
もちろん人権擁護のために必要なものは支出するとして、削るべき支出は削って、会費見直しをしていかなければなりません。
会員からお預かりしている大切な会費は、会員が納得するように使わなければならないはずです。

11 日弁連の重要政策を民主的に決定するべきです。
単位会や各弁連、各種委員会、一般会員の意見を大切にするべきです。
委員会等の構成と議論は、単位会や各弁連からの意見を反映させるべきです。
また、日弁連の最高意思決定機関は総会ですが、総会での意思決定は、派閥工作の末に獲得された多数の委任状の行使により正常に機能しているとは言えません。
そこで、委任状には、委任事項ごとに賛成、反対、賛否一任を明記することを義務づけるなど、委任状行使の在り方を検討するべきです。
さらに、日弁連会長選挙の制度も改革すべきです。派閥に属さない候補でも、また、資金力に乏しい候補でも、公平に闘える選挙制度を構築するべきです。

重点政策案 第1ほんとうの司法改革を目指す

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1 司法試験の年間合格者数を1000人以下とすることを求めます。

(1)政府は、司法試験の年間合格者数を1500人以上とする、との法曹人口政策を維持しています。これを日弁連も受け入れています。
  全国の弁護士数は、新司法試験が2006年に導入された当時2万人台でしたが、いまは4万人を超えました。弁護士白書2018年版の予測によれば、弁護士人口は、2030年に5万人超、2040年に6万人超、2050年に最多の6万3374人に達します。これが司法「改革」の結果です。
 しかし、司法「改革」が前提としていた法曹需要の増加は実現しておらず、それどころか、全国の裁判所の新受件数はピーク時に比べて激減しています。民事・行政事件、刑事事件、家事事件及び少年事件の新受件数の総数は、最高裁ホームページの司法統計「全新受件の最近5年間の推移」によれば、以下のとおりです。
 2003(平成15)年 611万5202件(過去最多)
 2008(平成20)年 443万2985件
 2013(平成25)年 361万4235件
 2017(平成29)年 361万3952件
このように裁判需要は、毎年減少しており、ピーク時の半減に近づきつつあります。
 事件数の減少と弁護士数の激増に伴い、業務拡大の必要性と重要性が強調されますが、業務拡大は思ったように進んでいません。企業内弁護士などの新たな法曹需要も、弁護士の急増を吸収するだけの規模ではありません。
弁護士激増により、弁護士の収入低下が急激に進みました。国税庁の統計によれば、赤字の弁護士が約7000人もいます。

(2)新人弁護士については、日弁連のアンケート結果によると、6割以上が年俸480万円以下、2割以上が年俸360万円以下という収入状況が定着しています。ここから奨学金や貸与金や税金や健康保険料や年金を支払い、弁護士会費を支払うとすれば、弁護士としての自立どころか、結婚して家庭をもつこともなかなか難しいという状況になっています。
 給費制廃止違憲訴訟が闘われていますが、同訴訟で提出された陳述書にも、苦境を訴えるリアルな叫びがありました。新65期から69期のアンケートへの回答にも、「貸与世代同士で結婚しましたが、夫婦合わせて現在約1200万円ほどの借金があります。現在妊娠中で、しばらく休業しなければならないため、今後どうなるか本当に心配です。」といった悲痛な訴えが見られます。
 弁護士に経済的な余裕がなくなり、弁護士の数は増えたけれども、公益的活動の担い手が逆に減っているのではないかと思われる分野もあります。もちろん、弁護士としての志高く、いわば清貧に生きる弁護士もいます。むしろ、若手弁護士のなかに「清貧弁護士」が増えているのではないか、という感覚もあります。
 しかし、そうした「超人」のような弁護士に期待するのでは、弁護士会を持続していくことはできないと思います。弁護士会の全体の状況を見れば、弁護士激増によって、ビジネス化の波が押し寄せ、これに乗れない弁護士が淘汰されつつあるのではないでしょうか。経済的利益の配慮が人権擁護の要請に優越するようになってはいないでしょうか。また、過剰なビジネス化により、人権擁護のための制度であるはずの弁護士自治が破壊されつつあるのではないでしょうか。

(3)日弁連が実施した「第69期の弁護士就業状況アンケート集計及び分析結果」の自由記載欄には、「ボスのパワハラ、過干渉、会務を実質的にやらせない、弁護士業務以外の負担が大きい、仕事を教えない、外部と交流させない等いわゆるブラック事務所が多いです。このような実態を知らないまま就職してしまい、苦労したり、退職してしまう同期を何人も見ましたし、私もその一人です。」、「とにかく、新規登録弁護士が多すぎ、業界として受入余力がないので、待遇が下がってしまっている。十分な給料さえ与えられるなら、Aのような事務所でもかまわないと就職してしまい、そこで感謝してしまっている現状がある。職域の急激な拡大が不可能であるのならば、新規登録を減らす方向で対応するしか、待遇改善の道はない。弁護士会としては、新規登録数減少へ動いてほしい。」といった悲痛な意見が寄せられていました。
 さらに、第70期に対する同様の日弁連アンケートには、「弁護士の収入が減り、資格の魅力がなくなっている。司法試験合格者数の削減など具体的な措置が取られない限り、安心して今後もこの仕事を続けていけるか分からない。」、「就業状況を改善するために、司法試験合格者数を年500人すべきである。1000人などはまだ甘いと感じる。」、「弁護士会は基本的に信用できない。強制加入団体だからやむをえず加入しているだけ。今のままの弁護士会、日弁連は、百害あって一利なし。方向としてはそっちに向かっているように思う。」、「私は50代のサラリーマンで修習前の会社のインハウスになった。同期の弁護士の話を聞いていると、一部上場企業ではありえない劣悪な労働条件である。このあたりを見直さないと、若い人たちはいずれ法曹を目ざさなくなると思う。」、「弁護士の業務時間の見直しに取り組んで欲しい。」、「労働時間をなんとかしてほしい。特に、完全な雇用ではなく、業務委託のようなグレーゾーンの場合。」、「働き方改革などと世間では言っているのに、それを推進するはずの弁護士の世界は働き方が古いと感じます。委任契約を盾に残業代も支給せずに長時間労働(法定労働時間の2倍は働いています)を強いられていますが、実態から見れば何ら雇用契約と変わりません(指揮命令関係、労務対償性ともに明白)。今、同じ改革が遅れている医師業でも改革が始められています。是非、弁護士業界も自浄作用によりこの問題に取り組んでほしいと強く思います。」、「パワハラ等問題のある事務所が多いので制度的に改善してほしい。」、「70期だけで既に40人以上が離職したと聞き、その多くが、いわゆるボス弁のパワハラまがいの態度と聞いている。自分も同様の理由で転職活動中であるが、50期代以前の弁護士には、それが当たり前というような風潮が強く残っている。非常に憤りを感じるし、これに対し、日弁連乃至各弁護士会が何かしらの対応をとっていると聞いたことがない(認識していないとは考えられない。)。悪質な事務所については懲戒の対象になることを示し、ある程度指導していただきたい。」、「弁護士は長時間のハードワークにも耐えられるようなエネルギーが必要であり、生理などの不調のため休んだり3カ月以上の産休、育休をとるようなやわな女性には勤まらないという風潮を変えてほしい。」、「ハラスメント及び、給与不払い等についての調査、公表を行ってほしい。」といった、悲痛な叫びと、厳しい意見がたくさん寄せられています。
 こうした若手弁護士の現状と意見を真剣に受け止めるべきではないでしょうか。これを受け止められず、このまま日弁連が変わらなければ、弁護士会が崩壊してしまいかねないのではないでしょうか。

(4)2006年度には5784人であった法科大学院の入学者数が2018年度には1621人まで減少し、2004年度には4万3367人であった司法試験受験者数が2018年度には5238人まで減少しました。司法試験制度が変わっているので単純比較はできませんが、予備試験の受験者数が1万人程度であることを勘案したとしても、法曹の魅力は加速度的に低下しているといわざるを得ません。これも、弁護士を激増させた司法「改革」の結果です。
 このまま弁護士増加政策が継続されれば、弁護士と弁護士会の変質、弁護士自治の崩壊は免れないでしょう。弁護士と弁護士会は、日本国憲法と弁護士法のもと、戦後70年余、わが国の人権擁護に担い手であり続けました。このまま弁護士人口が増え続け、弁護士と弁護士会が変質し、弁護士自治が崩壊してしまえば、在野における人権擁護の担い手が失われてしまいます。

(5)日弁連の「法曹人口将来予測-2020年に新規法曹を1,500人にした後1,500人を維持-」(弁護士白書2018年版)によれば、「実働法曹人口は2020年に4万6,806人となり、その後も年間司法試験合格者数1,500人を維持していくと、法曹人口総数は、2063年に6万4,171人となって、新規法曹資格者と法曹でなくなる者が均衡し、安定する。このときの弁護士人口は5万7,453人と予想される。」とのことです。この日弁連の法曹人口予測では法曹資格取得者が死亡または引退で70歳で法曹でなくなることを前提にしています。ところが、弁護士白書2018年版によれば、2018年3月31日現在で70歳以上の現役弁護士が合計5318人(弁護士全体の13.27%)いますから、上記の日弁連の法曹人口予測は、かなり甘めです。
 この「甘い」弁護士白書2018年版の予測でも、弁護士人口は、以下のとおり推移し、2030年に5万人超、2040年に6万人超、2050年に最多の6万3374人に達します。

  2018年4万0066人  
  2020年4万1962人
  2025年4万6820人  
  2030年5万1754人
  2035年5万6453人  
  2040年6万0729人
  2045年6万3352人  
  2050年6万3374人
 しかも、日本の人口は減少し続けます。弁護士白書2018年版によれば、弁護士1人当たりの国民数は、以下のとおり推移し、2050年までにおよそ半減します。
  2018年3149人  
  2020年2987人  
  2025年2617人  
  2030年2302人
  2035年2041人
  2040年1826人  
  2045年1680人  
  2050年1608人
  政府の少子化社会対策白書平成30年度版によれば、日本の総人口は、2017年時点の1億2671万人が、2065年には8808万人程度へと実に30%以上減少すると見込まれています。弁護士の扱う主な事件は、基本的に人と人の紛争である以上、人口が減少すれば紛争も減少することになりますから、法的需要は今後急激に減少していくと予想されます。
 この観点からも、司法試験合格者を減員するのが相当ということになるはずです。

(6)ここで、上記の日弁連の「予測」とは別に、単純化したシミュレーションをしてみます。①司法「改革」以前の司法試験の年間合格者数が約500人だったことから、毎年500人の法曹が(元裁判官も元検察官も最後は)弁護士として引退していくと仮定し、②裁判官と検察官の新任数が近年それぞれ100人を下回っていることから、裁判官と検察官の新任数を多くても計200人と仮定すると、司法試験の年間合格者数が700人を超えれば、弁護士人口は増えていくこととなります。
 つまり、司法試験の年間合格者数が1500人の場合には、(1500-200)-500=800の計算で、毎年約800人の弁護士が増えることになります。この場合、埼玉、千葉県、京都、札幌の各弁護士会の会員数が800人前後ですから、毎年これらの弁護士会に匹敵する弁護士が増えていくことになります。司法試験の年間合格者数が年間1000人でも、(1000-200)-500=300の計算で、毎年約300人の弁護士が増えることになります。この場合、茨城県、群馬、熊本県、沖縄の各弁護士会の会員数が300人弱ですから、毎年これらの弁護士会に匹敵する弁護士が増えていくことになります。
 ここで、弁護士人口を減らすべきと考えるならば、司法試験の年間合格者数を700人以下にするべきということになります。また、仮に、現状の約4万人が弁護士人口として適正と考えるとしても、司法試験の年間合格者数を700人程度に止めるべきということになるはずです。さらに、仮に、弁護士人口を少しずつは増加させるべきと考えるとしても、前記したとおり、すでに弁護士激増の結果として深刻な弊害が生じていることを考えると、年間300人以上の増加は、もはやとうてい容認できないのではないでしょうか。そうすると、若干の弁護士増が好ましいと考えるとしても、司法試験の年間合格者数を1000人以下とするべきということになるのではないでしょうか。

(7)このように考えてくると、司法試験の年間合格者数として1000人以下を求めることについては、弁護士会内で広く合意を得ることができるはずです。
 よって、日弁連は、司法試験の年間合格者数を年間1000人以下とすることを政府に強く求めるべきです。これにより、弁護士需給のバランスを改善し、弁護士の収入が急激に低下している現状や、弁護士が自由と正義のための仕事をしにくくなっている現状を打開し、弁護士の職業的魅力、弁護士の夢とプライドを取り戻さなくてはならないと思うのです。

(8)司法試験の年間合格者数を1000人以下とすることを政府に強く求めるためには、全国の弁護士から広く意見を集約し、全国の弁護士と弁護士会が一丸になって運動を展開する必要があります。
 そのためには、全国の全ての単位弁護士会から1人以上の委員が選出される民主的な「対策本部」を設置して、運動を展開するべきです。

(9)ところで、日弁連が2012年3月15日に発した「法曹人口政策に関する提言」は下記のとおり提言していました。

 記
 司法試験合格者数をまず1500人にまで減員し、更なる減員については法曹養成制度の成熟度や現実の法的需要、問題点の改善状況を検証しつつ対処していくべきである。

 この点、同提言は、「まず1500人にまで減員し」、「更なる減員については…対処していくべきである」としたうえ、実は、この後の部分で、年間合格者数1500人の場合だけでなく、同1000人の場合についても、法曹人口のシミュレーションを示しています。これは、当時、同提言を検討していた「法曹人口政策会議」において、同1000人以下を求める意見も強かったことから、将来的には同1000人以下を求めることもあるとのメッセージを含ませたものです。
 つまり、当時の同提言の起案者の説明によれば、「まず」とは「直ちに」を意味するとのことでした。そして、将来的な4万~6万人といった法曹人口の数字、同1000人の法曹人口シミュレーションを敢えて主文に盛り込んだのは、「1500人にまで減員し」ても、法曹人口が激増していくという危機感を表し、それを前提として「更なる減員」に向けた含みを持たせたものでした。
 同提言から4年後、2016年3月11日の日弁連臨時総会決議では、「まず、司法試験合格者数を早期に年間1500人とすること」とされ、主文から「更なる減員」が除かれましたが、これは、同提言を何ら変更するものではないとの説明が日弁連執行部から繰り返されました。
 よって、同提言が発出された2012年以降、さらに深刻化した弁護士激増のさまざまな弊害を考えれば、日弁連が司法試験年間合格者数1000人以下を求めることは、これまでの日弁連の法曹人口政策に沿ったものでもあるはずです。



(1)法科大学院に入学するためには、多額の入学金や学費に加え生活費が必要になります。奨学金制度もありますが、全員が受けられるわけではありません。また、法科大学院の近くに住んでいなければ、通学できないため、家族の生活費まで必要になる場合もあります(全国で入学者を募集している法科大学院があるのは14都道府県だけです)。
 法科大学院の単位取得はとても大変で、予習と復習、単位取得のための試験勉強等に追われ、アルバイトをする時間も基本書を体系的に読み込む等の時間を捻出するのも至難の業です。
 また、法科大学院は、あくまでも「大学院」なので、大学卒業資格がなければ進学できません。
 法科大学院の司法試験合格率が大学の至上命令となっているので、人も金も法科大学院に集中させられており、学部の空洞化も目立っています。
  弁護士の激増で経済的基盤が失われたこと等により、2018年の法科大学院の入学者数は1621人に止まりました。これは、2006年の入学者数5784人に比べると約28%にすぎず、この間、法科大学院の入学者数は3分の1以下まで激減したことになります。
   2004(平成16)年に法科大学院構想が実現に移されてから14年が経過していますが、すでに、さまざまな歪みが生じ、74校あった法科大学院のうち38校の法科大学院が廃止されるか学生の募集停止をしており、2018年7月現在で学生の募集をしている法科大学院は36校にすぎません。
 この点からも法科大学院制度の失敗は明らかです。
 そもそも、法曹は自由と正義に仕える仕事ですから、その資格試験としての司法試験は、誰でもどこでもいつまでも公正に受験できる試験であるべきです。とすれば、金と時間がない者を不利に扱い、受験資格を制限する法科大学院制度には、治癒しがたい根本的な欠陥があります。

(2)法科大学院制度の失敗が繕えなくなり、政府は、ある程度は、法科大学院の制度改革を進めています。
 しかし、政府の進める制度改革は、これまでの法科大学院の理念とされていた、①独立性、②公平性と開放性、③多様性を捨て去ってしまいました。すなわち、①法科大学院を大学の学部と一体化し、②自大学または協定大学の学部生を優先的に合格させる差別待遇を認め、③法学系課程以外の出身の者または実務経験者の割合を「3割以上」と定めた文科省告示を撤廃してしまいました。これでは、法科大学院制度の温存だけを目的とした、間違った制度改革と批判されてもやむを得ないのではないでしょうか。
 政府の進める制度改革は、むしろ、法科大学院制度の弊害をさらに深刻化させる懸念すらあります。たとえば、「5年一貫コース」(法学部3年+法科大学院2年の法曹養成コース)では、幼少期からエリート教育を受けた裕福な家庭の出身者、大学入学時または学部早期に法曹を志望する学生、概して優等生が法曹になりやすくなる反面、そのようなメインルートに乗れない学生が法曹になりにくくなるのではないでしょうか。それは、法曹の多様性を決定的に損なわせることにならないでしょうか。失敗続きだった未習者教育を具体的にどのようにすれば改善できるのかについても全く処方箋が示されていませんから、この点でも法曹の多様性はさらに損なわれてしまうのではないでしょうか。それでもなお、こうした制度改革を進めるというのであれば、法曹の多様性を確保するため、予備試験制度を拡充するべきではないでしょうか。
 また、「ギャップターム」解消との名目で法科大学院在学中に司法試験受験を認める(ただし、司法修習の要件としては、法科大学院修了が必要)との法科大学院改革も進められています。「ギャップターム」とは、3月に法科大学院修了した直後に司法試験に合格しても、同年4月から司法研修所が始まる11月までの間のことをいうのだそうです。この「ギャップターム」の解消は、以下のとおり、法科大学院制度自体の否定というべきものです。
 そもそも、司法試験法は「司法試験は…法科大学院課程における教育と…有機的連携の下に行う」(1条3項)とし、試験は「裁判官、検察官又は弁護士となろうとする者に必要な専門的な法律知識及び法的な推論の能力を有するかどうかを判定することを目的」とすると規定しています(2条、3条)。つまり、法科大学院在学中に司法試験の受験資格を認めるということは、法科大学院の課程を修了していない者に「裁判官、検察官又は弁護士となろうとする者に必要な専門的な法律知識及び法的な推論の能力を有するかどうか」を試す機会を与えることになってしまいます。これでは、法科大学院の趣旨・理念に決定的に反します。 
 また、このように法科大学院のカリキュラムの中途で司法試験の受験を認めることになれば、出題範囲を狭くし、問題の難易度も落とさざるを得なくなるはずですから、司法試験がいまよりさらに簡単になるのではないでしょうか。それで国民の人権を擁護するための基礎的素養が身についているかどうか、適正に判断できるのでしょうか。こうした疑問にもかかわらず、日弁連は、「ギャップターム」解消についても、法科大学院の生き残り策の1つとして容認しています。

(3)法科大学院の、適性試験受験者はピーク時の10分の1以下になり、前記したとおり、入学者数は2006年の5784人から2018年度の1621人まで減少しています。つまり、法科大学院は全く人気がありません。これに対し、予備試験の出願者は1万3000人を超え、受験者は1万人を超えています。つまり、いまの法曹志願者は予備試験人気に支えられています。
 とすれば、法曹志願者を増やすべきというのであれば、法科大学院制度を縮小し、予備試験制度を拡充するのが、最も効果的ということになるのではないでしょうか。

(4)しかしながら、日弁連は、いまだに法科大学院を法曹養成の中核と位置づけるとともに、政府の方針には従順です。
 たとえば、日弁連は、「未習者3割以上」基準を撤廃する文科省告示の「改正」についてすら、「やむを得ない」との意見書を提出しています。同基準を撤廃すれば、多様性確保の要請に応えられるのか、重大な懸念が生じます。このような法科大学院の理念に反する「改正」についてすら、日弁連は反対していないのです。

(5)よって、日弁連は、法科大学院を法曹養成の中核とするとの従来の方針を改め、政府に対し、法科大学院を司法試験の前提としない制度改革を求めるべきです。
 また、上記の制度改革が実現されるまでは、日弁連は政府に対し、予備試験合格者が法科大学院修了者よりも司法試験受験において不利益に扱われている不合理な現状、たとえば、予備試験の合格者数が司法試験合格率に比して少ない上、予備試験に合格した年に司法試験を受験することができないといった現状の是正を求めるべきです。



重点政策案 第2:弁護士業務の改善を目指す

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1 政府に対し、法律扶助予算を抜本的に拡充し、法律扶助制度の基本的性格を貧困者対策から福祉政策へと転換することを求めます。

2 政府に対し、日本司法支援センター(法テラス)の低額かつ不合理な報酬のあり方を見直し、報酬と実費を引き上げるとともに、被援助者への給付制を実現すること、少なくとも償還免除を大幅に拡大することを求めます。
 償還免除については、むしろ「日本司法支援センター中期目標」においては償還率90%以上を目指すとされており、法テラスに日弁連から強く働きかける必要があります。生活保護に準ずる被支援者の償還免除拡大に向けた運動も強化発展させる必要があります。
 また、政府に対し、法テラスのあまりに煩雑な手続を簡略化するなど、手続面での改善も求める必要があります。

3 法律援助事業の国費化を求めることも重要な課題です。犯罪被害者、難民、外国人、子ども、精神障害者等、生活保護などの分野における法律援助事業については、現在は、国費負担ではなく、弁護士会費で賄われています。この毎年の支出額が、2016年度の約6.2億円から2019年度には7.3億円に増大する見込みとのことです(毎年5~6%の増加)。
 これらの分野において、またさらに新たな分野において、人権擁護活動を一層充実していく必要があることは当然ですが、一方で、これらの事業については、私たちの会費で賄われる筋合いのものではなく、早期に国から費用を支出すること(国費化)を求めるべきです。

4 弁護士偏在対応については、弁護士過剰の時代に応じた政策の見直しを進めるべきです。また、偏在対応弁護士事務所については、貸付等の安易な援助制度に頼ることなく、地方自治体との提携を強める等、法律事務所の経営を継続して支えることのできる実質的な支援策を構築しなくてはなりません。
 かつて弁護士過疎といわれた地域においても、いまや、新興大手弁護士事務所の進出、出張相談、地域を問わないインターネット経由の相談や受任といった、新たな現象と過当となりかねない競争の状況が進行しており、日弁連は、こうした現実を踏まえ、さらに将来を予測したうえで、偏在対応政策を見直す必要があります。
 たとえば、日弁連は2017年度、北海道・枝幸町(北海道旭川地方裁判所名寄支部中頓別簡易裁判所管轄地域)に公設事務所を開設し、同事務所に対し2000万円を限度として援助金を支出することを決めました。同事務所の近隣にはすでに、4つの「ひまわり基金法律事務所」があります。そもそも、同地域では、法テラスが予測事件数僅少であることを理由に過疎地対応事務所の設置を見送ったという経緯があります。法テラスも尻込みする偏在対応まで日弁連が担わなくてはならないのでしょうか。
 偏在対応弁護士事務所については、日弁連から貸し付けた補助金等の返済免除申請が2017年度だけで13件ありました。これでは、会費の使い方として会員から理解されないのではないでしょうか。
 とくに、弁護士過剰の時代において、今後も日弁連が、独立開業支援補助金(貸付金)の支出を続ける必要があるのか、問い直す必要があると思います。日弁連によると、同補助金については2017年時点で、貸付合計が4億9900万円(146件)、返済合計が1億3900万円(36件)、免除合計が5200万円(16件)、貸付残額が3億700万円になっているとのことです。
 また、偏在対応を担わされた、主に若手の弁護士が精神疾患等のため業務が遅滞し売上が伸びず、日弁連からの貸付金の返済ができなくなったといった、返済免除の申請が相次いでいます。このような無理な偏在対応を改める必要もあると思います。そして、開業資金を貸し付けるだけではなく、自治体等との連携や経営相談などについても、日弁連からの継続的なフォローが必要です。

5 労働時間の短縮、女性への差別的扱いやセクハラ及びパワハラ等の禁止、いわゆる「ブラック事務所」問題への対応など、弁護士の労働環境を改善するための制度的な対応を検討し、この実現を目指します。
 前記した、第69期及び第70期の「弁護士就業状況アンケート集計及び分析結果」からすれば、こうした対応に緊急的に取り組む必要があります。それは日弁連の責務です。
 若手弁護士の働き方に関する問題については、勤務条件のミスマッチ や入所後のトラブルを防止するため、勤務時間、休日休暇、給料・収入、個人事件の受任の有無等、最低限合意すべき事項について定めたガイドラインを策定すべきではないでしょうか。また、ひまわり求人求職ナビが就職活動において活用されていることから、同ナビの記載事項を見直し、たとえば離職率、勤務条件明示書面の交付の有無等の項目を加えるといった工夫をすることも有意義であると思います。


重点政策案 第3:憲法と立憲主義を守る

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1 いわゆる「9条加憲論」など恒久平和主義に反する改憲に対しては、人権擁護団体としての日弁連の立場から、明確な反対意見を提出できるよう、早急に会内での意思統一を進めるべきと考えます。

(1)日弁連が、改憲の動きに対応すべく、会内合意形成のために多大な苦労を重ねていることには、素直に敬意を表します。2018年5月25日の日弁連定期総会において可決された「憲法に自衛隊を明記する憲法9条改正案に対し、国会での慎重審議と国民が熟議できる機会を保障するとともに、憲法改正手続法の見直しを求める決議」についても、さまざまな見方はありますが、一定の評価を受けていることも事実です。

 (2)しかしながら、これまでの日弁連の決議や宣言等に見られる基調をくり返すのみでは、恒久平和主義に反する改憲案が発議された場合、今後の人権保障に重大な悪影響を及ぼすことが明白であるにも関わらず、国民にその危惧を十全に伝えられない可能性が極めて高いと考えます。改憲の動きがいよいよ現実化していくなかでは、日弁連が明確に反対の意思表示を行い、改憲案の具体的な危険性を国民に訴えていく必要性が、ますます高まっているのではないでしょうか。

2 国家緊急権の創設に対し、日弁連として、明確な反対意見を提出できるよう、早急に会内での意思統一を進めるべきです。

国家緊急権とは、戦争・内乱・恐慌・大規模な自然災害など、平時の統治機構をもってしては対応できない非常事態において、国家の存立を維持するために、憲法秩序を一時停止して非常措置をとる権限です。自由民主党の日本国憲法改正草案には国家緊急権が規定されています。
国家緊急権は、一時的にせよ憲法秩序を停止し、行政府への強度の権限集中と人権制約を伴うものであることから、行政府による濫用の危険性が高いものです。これまでの歴史を振り返ってみても、非常事態の宣告が正当化されないような場合であっても非常事態が宣告されたり、戦争その他の非常事態が去った後も速やかに憲法秩序を回復させることなく人権侵害がなされてきた例は枚挙にいとまがありません。

3 秘密保護法、共謀罪法、安保法等の悪法の廃止を求めます。

 日弁連は、従前は別々に設置されていた秘密保護法と共謀罪法の対策本部を「発展的に解消して」1つに統合し、これらを2018年に「秘密保護法・共謀罪法対策本部」としました。
今後とも、秘密保護法と共謀罪法、そして安保法の廃止に向けた活動を継続的に展開していく必要があります。

重点政策案 第4:少年法と刑事法の改悪を許さず 、「改正」刑訴法の見直しを求める

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1 少年法と刑事法の改悪に反対します。

(1)法制審議会少年法・刑事法(少年年齢・犯罪者処遇関係)部会では、少年法における「少年」の年齢を18歳未満とすること、非行少年を含む犯罪者に対する処遇を一層充実させるための刑事の実体法及び手続法の整備(①起訴猶予等に伴う再犯防止措置の在り方、②少年鑑別所及び保護観察所の調査・調整機能の活用、③宣告猶予制度、④罰金の保護観察付き執行猶予の活用、⑤刑の全部の執行猶予制度の在り方、⑥保護観察、社会復帰支援施策の充実、⑦社会内処遇における新たな措置の導入、⑧自由刑の在り方、⑨若年受刑者に対する処遇原則の明確化等、⑩施設内処遇と社会内処遇との連携の在り方、⑪社会内処遇に必要な期間の確保、⑫若年者に対する新たな処分)などが検討されています。

(2)少年法の適用年齢引き下げには断固として反対するべきです。少年法における「少年」の年齢を18歳未満とすることは、更生可能な少年の成長発達を手助けする義務と責任を放棄することであり、ひいては、若年者の再犯を増加させ、社会秩序の維持にも資さないからです。 
 なお、少年法の適用年齢の引下げの理由の1つとして、選挙権年齢が18歳になるのであれば、全ての法律において、成人となる年齢を18歳に統一することが国の法体系として望ましく、わかりやすいということが挙げられています。しかしながら、選挙権年齢は、若者の政治参加の保障という観点から考えるのに対し、少年法の適用年齢は、上述した少年保護の観点と社会秩序の維持の観点から考えるべきです。「国法上の統一」や「わかりやすさ」という基準で安易に決められるべきではありません。

(3)検察官による「起訴猶予に伴う再犯防止措置」の法制化にも断固として反対するべきです。この措置は、検察官が改善更生のために働き掛けが必要と判断する被疑者に対し、一般的に守るべき事項や犯行の特性に応じて守るべき事項などを設定し、検察官自らが主体となって、一定期間、指導・監督を行うこと等を内容とする仕組みです。しかし、これを認めてしまうと、検察官が裁判官の役割を果たすことになり、虚偽自白・えん罪を招く危険があります。この措置には日弁連も反対する意見書を提出しており、引き続き反対の声を上げていくべきです。

(4)そのほか、法制審議会では、人権擁護の観点から看過できない危険性を有する法ないし制度の「改正」が審議されており、これを不断に監視して、少年法と刑事法の改悪を許してはいけません。

2 「改正」刑訴法の見直しを求めるべきです。

 「改正」刑訴法が2015年8月に成立しましたが、同法には以下のような重大な問題があります。すなわち、取調べの録音・録画制度については、裁判員裁判対象事件のような極めて狭い範囲に限定されている上、録音・録画の実施に当たっては、取調官の裁量によって、広範な例外事由が認められています。また、証拠開示制度については、公判前整理手続に付される事件のみを対象とし、全面的証拠開示の実現にはほど遠い内容です。くわえて、弁護人に交付される証拠一覧表には、証拠の内容を知るために不可欠となる要旨の記載がなく、実効性の観点からも問題があります。さらに、「改正」刑訴法は、えん罪防止を図り、適正手続の保障を徹底するという当初の目的を逸脱し、捜査手法の拡大にも踏み切りました。
 このうち、通信傍受については、傷害や詐欺といった「重大な犯罪」とは言い難い犯罪にまで対象を拡大しており、過去の最高裁判例に照らしても、違憲となる疑いが濃厚と思われます。また、いわゆる司法取引制度の導入は、自らの利益のため、被疑者・被告人が故意に他人を引き込むことによって、新たなえん罪が構造的に生み出される危険性が高いものです。
 上記の種々の問題点を十分に考慮した上、従来の糾問的な捜査手法を改革するとともに、えん罪の防止を図り、適正手続の保障を徹底するという観点から、「改正」刑訴法を抜本的に見直すべきです。
 日弁連は、全面可視化を求めていましたが、2016年5月の「改正」刑訴法では一部の可視化に止まっています。施行後3年の見直し時期に向けて、日弁連として全面可視化を実現する運動が求められます。
 あわせて、取調への弁護人の立会権の実現も重要な課題です(平成30年11月30日近弁連人権擁護大会決議)。

重点政策案 第5:国選弁護の見直しと拡充を求める

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1 国選弁護制度についてさらなる拡充が必要です。

(1)逮捕直後からの国選弁護人の選任を求めます。
勾留後の被疑者国選は全ての事件に及ぶことになりましたが、逮捕直後から国選弁護人選任を義務づける必要があります。  

(2)在宅被疑事件の弁護についても国選弁護制度を導入する必要があると考えます。
 警察の取調べを受け、まだ逮捕に至っていない被疑者のうち、経済的に私選弁護人を選任できない被疑者についても刑事弁護の必要があるからです。在宅事件を含めた包括的な国選弁護制度が必要ではないでしょうか。

(3)被疑者国選弁護における弁護人の複数選任の規定(刑訴法37条の5)の見直しを求めます。
 現行法は、被疑者国選弁護における弁護人の複数選任について、死刑または無期の懲役に当たる事件で特に必要があるときに限定しています。しかし、それでは傷害致死事件などが含まれませんし、殺人事件であっても、その前提として死体遺棄被疑事件で逮捕勾留されることがありますが、死体遺棄では弁護人の複数選任が許可されないということになってしまいます。そこで、弁護人を複数選任できる事案を広げる必要があります。

(4)新たな刑事弁護拡充制度の導入について
 国選弁護活動における医師等の鑑定費用を支援する制度、国選弁護の後に弁護士が医療・福祉機関等に繋ぐ支援をした場合に報酬や費用を支払う制度など、いくつかの弁護士会で先進的な取組がされていますが、こうした新たな刑事弁護拡充制度を全国に広げていきたいです。

2 国選弁護報酬の見直しと拡充を求めます。

(1)不起訴事件について、報酬を見直し、拡充するべきです。
 起訴後の弁護活動では、無罪や一部無罪については国選弁護報酬   が支払われます。また、国選報酬改善運動の結果、勾留取消等の弁護 活動については報酬が支払われるようになりました。
 しかし、現行制度では「嫌疑なき不起訴」への報酬増額がありません。たとえば、被疑事実を争っていて、弁護人が活動し、防犯カメラを弁護士会照会で採証するといった相応の調査をして、その調査活動の結果、不起訴になったとしても、国選弁護報酬は支払われません。これでは弁護活動が正当に評価されているとはいえず、問題です。
 また、現行制度では「入口支援」の結果、不起訴になっても報酬増額がありません。精神障害のある被疑者やホームレスの被疑者などに ついては、刑事施設に送るよりも、しかるべき医療・福祉機関等に繋ぐことによって、本人の支援に資するとともに、結果として、再犯防 止、社会的コストの削減になると考えられる場合があります。そして、 そのようないわゆる「入口支援」を弁護人がすることで、不起訴になることがあります。このようなケースでも、現在は国選弁護報酬は支払われません。
  以上のような不起訴事件の弁護活動についても正当な報酬が支払われるように制度を改善するべきです。

(2)保釈は1回しか考慮しないという報酬制度も問題です。
 現在、一審の刑事弁護においては保釈が1回しか考慮されないことになっ ています。たとえば、一審の刑事弁護において、公判中に保釈決定を得て、実刑判決が言渡された後、被告人が控訴する前にもう一度弁護人が保釈決定を得たとしても、2回目の保釈は報酬の対象とされない建て付けになっています。
 このような制度は、弁護活動の労力が保釈のたびごとにかかることを考慮しないもので、明らかに不当ですから、見直すべきです。


重点政策案 第6:会費減額を検討する

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 日弁連の会計は、2017年度決算において、単年度1億9536万円の黒字、次期繰越金44億0425万円となっており、日弁連会費の減額を検討すべきです。

   確かに、会費減額については、長期的な検討をしなければならず、慎重に考えなければなりません。しかし、とくに若手を中心に会費の負担感が重くなっています。もちろん人権擁護のために必要なものは支出するとして、削るべき支出は削って、会費見直しをしていかないと、強制加入の廃止や弁護士自治の崩壊といった論議に結びつきかねないのではないでしょうか。

  この点、2018年に被疑者国選弁護制度の対象が勾留全事件に拡大したことに伴い、その分の法律援助事業が縮小され、日弁連会費は、月1900円減り、月1万5200円になっています。

   さらに、不断の努力でさらなる会費減額を真摯に検討するべきです。また、会員からお預かりしている大切な会費は、会員が納得するように使わなければならないはずです。